怪火
悪路神の火 (あくろがみのひ)
伝承地: 三重県亀山市
基本解説
三重県に伝わる、雨の夜に現れる不気味な怪火です。前方を歩く者の足元を照らすように現れますが、追い越そうとすると病にかかったり、災厄に見舞われたりすると言われています。
詳細解説
悪路神の火は、伊勢国(現在の三重県)に伝わる、雨夜の暗い道に浮遊する怪火の一種です。この火は、旅人や夜道を歩く者のすぐ前を、まるで足元を案内するかのようにふわふわと浮遊します。一見、親切な明かりのように思えますが、実は「悪路神」という災厄を司る神の化身であり、決して追い越したり、火に触れたりしてはいけないと戒められています。もし無理に追い越そうとすれば、途端に体調を崩して寝込んだり、最悪の場合は命を落としたりすることもあると恐れられました。また、この火が消えた場所には災いが降りかかるとも言われています。暗闇の中で唯一の光を頼りにせざるを得ない人間の心理を突いた、非常に巧妙で恐ろしい妖怪です。雨音にかき消されるような微かな光の中に、古の神の厳しい裁きが隠されているのかもしれません。ぬかるむ足元を照らすその光は、救いか、それとも破滅への誘いなのでしょうか。
伝承・民話
三重県亀山付近の鈴鹿峠などでよく見られたと言われます。雨の降る晩、提灯を持たずに歩く者の前に、どこからともなく火が現れます。ある旅人がこの火を杖で叩いたところ、その場で激しい高熱を出して倒れたという話が残っています。
出典・考証
諸国里人談 日本妖怪変化語彙
伝承地マップ
※地図上の赤い円は、その妖怪の主な影響範囲または伝説の広がりを示します。